「血のめぐりを整える」というフレーズは、アーユルヴェーダ関連の記事でよく見かけます。

ただ、この言葉が具体的に何を指しているのかは、あいまいなまま使われがちです。

アーユルヴェーダにはラクタという、血液にあたる体組織の考え方があります。

この記事では、ラクタという単位から「めぐりを整える」の中身を分解し、現代医学が扱う血液との違いを見ていきます。

ラクタという単位

アーユルヴェーダでは、体はダートゥと呼ばれる七つの組織が順番に変換されてつくられると考えられています。

その2番目の段階にあたるのがラクタで、血液にあたる組織とされます。

ラクタは単独で存在するのではなく、アグニによる消化の連鎖のなかで、前段階のラサ(体液)から変換されてつくられるとされます。

この変換にはランジャカ・ピッタという働きが関わり、色を与える役割を担うと説明されます。

現代医学の血液との視点の違い

現代の血液検査は、赤血球や白血球といった成分の数値を測定し、基準値との比較で状態を判断します。

一方でラクタは、数値化された成分ではなく、質やめぐりの状態を扱う概念です。

同じ「血」という言葉を使っていても、見ている単位が違います。

ラクタと現代医学の血液で、見ている単位の違い

位置づけ、扱う対象、乱れの見え方、整える発想、代表的な行為について、ラクタと現代医学の血液を比較した一覧
観点ラクタ(アーユルヴェーダ)血液(現代医学)
位置づけ七つのダートゥの2番目の段階循環器系を流れる体液
扱う対象質やめぐりの状態成分の量や数値
乱れの見え方肌の色つやや熱っぽさ検査値の基準からのずれ
整える発想消化と食べ合わせ、ハーブ原因疾患への医学的な治療
代表的な行為マンジシュタなどの活用血液検査、投薬、輸血

どちらか一方が正しいという関係ではなく、扱う単位が違う二つの見方

ラクタと現代医学の血液を、位置づけ・扱う対象・乱れの見え方・整える発想・代表的な行為で比較した一覧

表からも分かるとおり、ラクタは血液検査の代わりになるものではありません。

数値による健康状態の把握が必要な場面では、医療機関での検査が前提になります。

何をすると「整える」とされるのか

アーユルヴェーダで「血のめぐりを整える」とされる行為は、一つに絞られているわけではありません。

まず土台として、アグニによる消化そのものを整えることが挙げられます。

消化がうまくいかないとアーマが生じ、ラクタを含むダートゥ全体の質が落ちると考えられているためです。

次に、質の合わない食べ合わせとされるヴィルッダ・アーハーラを避けることも、同じ文脈で語られます。

そのうえで、血のめぐりを整えるとされるマンジシュタのようなハーブを取り入れることが、伝統的な工夫として紹介されてきました。

いずれも、特定の数値を上げ下げする行為ではなく、質やめぐりという扱いにくい対象に、複数の角度から働きかける発想です。

歴史的処置との違い

ラクタに関わる歴史的な処置として、血液を抜くラクタモークシャナ(瀉血)が知られています。

外科的な記述の多いスシュルタ・サンヒターには、器具や方法が詳しく記されています。

ただし、これは現代の献血や治療目的の瀉血とは別の文脈で語られてきた歴史的な処置です。

現代ではほとんど行われておらず、日本のサロンやリトリートで受けられるものでもありません。

「血にまつわるケア」と一括りにせず、歴史的な記述と現代のセルフケアを分けて理解しておくことが必要です。

まとめ

「血のめぐりを整える」という言葉は、ラクタという体組織の質とめぐりを扱う、アーユルヴェーダ独自の単位に基づいています。

現代医学の血液検査とは、そもそも扱っている対象が違うため、どちらか一方に置き換えられるものではありません。

数値の確認は医療機関に委ね、ラクタの発想は消化や食べ合わせ、ハーブといった日々の工夫として取り入れる。

この使い分けが、両方の見方を無理なく共存させる考え方だといえます。

本記事は伝統的な考え方の紹介であり、医学的な診断・治療を目的とするものではありません。体調に不安がある場合や検査値が気になる場合は、医療機関にご相談ください。