動画で見ると、この2つはほとんど同じに見えます。お腹を速く動かして、フッフッと息が出ていく。名前だけが違う同じもの、と思われることもあります。

ですが、内側でやっていることは別です。違いは吸う息にあり、そこから分類も、向いている日も分かれていきます。

何が違うのかを一覧にすると

同じに見える2つの、中身の違い

カパーラバーティとバストリカについて、吐く息、吸う息、分類、主な狙いを並べて比較した一覧
カパーラバーティバストリカ
吐く息自分から強く自分から強く
吸う息力を抜いて戻る自分から強く
古典での分類浄化法(シャットカルマ)プラーナーヤーマ
名前の意味頭蓋を輝かせるふいご
主に語られる狙い滞りを払う熱を高める

外から見える速さは同じでも、吸う息を自分で行うかどうかが分かれ目

カパーラバーティとバストリカの、吐く息・吸う息・分類・狙いの比較

違いは吸う息にある

カパーラバーティは、吐く息だけを自分から行います。お腹を引き入れて短く強く吐き、そのあとは力を抜く。抜いた反動で空気が入ってくるので、吸う息は結果として起きるものです。意識は吐くほうにしかありません。

バストリカは、吸う息も自分から強く行います。強く吸い、強く吐く。この往復が同じ重さで繰り返されます。名前のふいごは、鍛冶で火をおこす道具です。押しても引いても風が出る、あの動きが元になっています。

この違いは、やってみると疲れ方に出ます。片方だけを能動的に行うのと、両方を能動的に行うのとでは、続けられる長さが変わります。

分類が別だという話

ハタヨーガの古典では、カパーラバーティは体を清める浄化法の一群に、バストリカは息を扱う技法、つまりプラーナーヤーマの一群に置かれています。

この区別は、名前の整理という以上の意味を持ちます。浄化法は、練習に入る前に体の側を片づけておく作業という位置づけです。対してプラーナーヤーマは、八支則で4番目に置かれた、練習そのものの段階にあたります。

つまりカパーラバーティは前準備、バストリカは本編、という並びで捉えられてきました。同じ速い呼吸でも、練習の中で担当している場所が違います。

その日の状態でどちらを選ぶか

どちらも温める方向に働くとされます。だから選び方は、どちらが優れているかではなく、今日の体がどちらに寄っているかで決まります。

  • 体が重い、朝起きても動き出せない、痰が絡む。停滞が強く出ているときです。カパが優勢な状態にあたり、滞りを払う方向のカパーラバーティが選ばれやすい場面です
  • 手足が冷えている、消化が弱く食欲が出ない。温める側が求められている状態です。熱を高める方向で語られるバストリカが向くとされ、アグニを支える文脈で語られます
  • のぼせている、肌が熱い、いらだちやすい。熱がこもっている側です。どちらも向きませんシータリーのような冷ます呼吸に切り替えます
  • 落ち着かない、眠りが浅い、考えが止まらない。この日も強い呼吸は増やす方向に働きます。ナーディショーダナのような静かな技法のほうが合います

季節でも同じ考え方をします。季節の養生では、重さの残る冬から春にかけては動かす方向、暑さの盛りは冷ます方向が基本とされます。夏の午後に強い呼吸を長く行うのは、方向が逆になります。

練習のどこに置くか

強い呼吸法は、単独で行うものというより、練習の流れの一部として置かれてきました。順番には理由があります。

  1. 体を動かすアーサナ)。固まったまま強い呼吸に入ると、胸も腹も動きません
  2. 強い呼吸を短く。ここにカパーラバーティやバストリカが入ります。1区切り10回から20回ほどで、間に必ず自然な呼吸の休みを挟みます
  3. 静かな呼吸で整える。片鼻呼吸などで左右を均します
  4. 座って終える。上げた状態のまま日常に戻さない

強い呼吸で終わらないのが要点です。火をおこしたまま放っておかない、と言い換えてもよいかもしれません。静かな技法の具体的なやり方は呼吸法ガイドにまとめてあります。

やらない日を決めておく

回数や速さは、上達の指標にはなりません。むしろ、次の日にはやらないと最初に決めておくほうが、この2つとは長く付き合えます。

  • 妊娠中、生理中
  • 高血圧、心臓や呼吸器に不調があるとき
  • 発熱しているとき、体調を崩しているとき
  • 食後(空腹時が基本とされます)
  • 寝不足の日、すでに落ち着かない日
  • 目や耳に不調があるとき、めまいが起きやすいとき

やっている最中にめまい、手のしびれ、息苦しさが出たら、そこで中止して自然な呼吸に戻します。強い呼吸法でこうした反応が出るのは、速さが自分の今日の許容を超えたという合図です。慣れれば消えるものとして押し通さないのが、伝統的な指導での扱いです。

まとめ

カパーラバーティとバストリカは、外から見た速さが同じでも、吸う息を自分で行うかどうかが違い、古典での分類も浄化法とプラーナーヤーマに分かれます。

どちらも温める方向のため、選ぶ基準は今日の体がどちらに寄っているかです。重ければ動かす、冷えていれば温める、熱がこもっていればどちらもやらない。そして強い呼吸で終わらず、静かな呼吸で整えてから日常に戻す。この置き方さえ守れば、速さと回数を競う必要はなくなります。

本記事は伝統的な考え方の紹介であり、医学的な診断・治療を目的とするものではありません。持病がある方、妊娠中の方は、実践の前に医療機関や指導者にご相談ください。