「持たない暮らし」という言葉を聞くと、多くの人はミニマリズムや断捨離を思い浮かべます。
一方、ヨガの八支則にはアパリグラハという、同じく「持たない」を扱う考え方があります。
どちらも物を減らす方向を向いているように見えますが、扱っている対象は同じではないとされています。
二つの「手放す」が指すもの
ミニマリズムは、生活の中にある物の数を減らし、シンプルに保つことを目的にした暮らし方や考え方です。
一方、アパリグラハはヤマ(八支則の第1段階)に含まれる戒めの一つで、必要以上に物や地位、関係を所有し執着しないという心の持ち方を指します。
物を減らす行為そのものではなく、握りしめない心の状態が中心に置かれています。
目的と判断基準を並べる
アパリグラハとミニマリズムが扱う対象の違い
| 観点 | アパリグラハ | ミニマリズム |
|---|---|---|
| 目的 | 執着を手放す心の状態 | 暮らしをシンプルに保つこと |
| 扱う対象 | 心の持ち方 | 物の数や量 |
| 判断基準 | 握りしめていないか | 減らせているか |
| ゴールの形 | 決まった終わりの状態はない | 物が少ない状態 |
物を減らしても、減らしたこと自体に執着すればアパリグラハからは離れるとされる
表にすると分かるとおり、物の数を減らせているかどうかは、アパリグラハの判断基準そのものではありません。
物が少なくても、それを保つことに強くとらわれていれば、アパリグラハからは離れてしまうと考えられています。
実践は物の数より心の向き合い方から
アパリグラハを実践する上で、まず物を処分することから始める必要はないとされます。
今持っている物や関係に対して、どれくらい執着しているかに気づくことが先に置かれています。
例えば同じ1着の服でも、それを失うことへの不安が強いか、なくても構わないと思えるかで、心の状態は違うとされます。
物を増やすこと自体が問題視されているわけではありません。
問題とされるのは、必要以上に握りしめる心の状態だとされています。
アーユルヴェーダの生活規範との重なり
アーユルヴェーダのサドヴリッタ(良い行いの規範)にも、欲を過剰に持たないことを説く項目が含まれます。
ヨガのヤマと、アーユルヴェーダの生活規範は、別の体系でありながら同じ方向を向いているとされています。
八支則全体の位置づけはヨガの八支則をたどるで解説しています。
まとめ
ミニマリズムが物の量を扱うのに対し、アパリグラハは心の執着を扱う考え方だとされています。
形は似ていても、判断基準もゴールの形も別のものです。
物を減らすことを目的にするのではなく、今持っているものへの執着に気づくことから始めるのが、アパリグラハの実践の入り口だとされています。
本記事はヨガという伝統的な体系の考え方の紹介であり、医学的な診断・治療を目的とするものではありません。心の状態に不安があるときは、専門家にご相談ください。


