アーユルヴェーダの食事法を学ぶと、必ず出てくるのがラサという言葉です。味という意味ですが、単なる好みの分類ではなく、それぞれの味が元素と結びつき、体に特定の方向の働きをもたらすという体系になっています。

体質別の食材リストを覚えるより、この6つの味を理解しておくほうが応用が効きます。

6つの味と元素

元素増やすとされる減らすとされる食材の例
甘味地・水カパヴァータピッタ米、小麦、乳製品、根菜、果物
酸味地・火ピッタ・カパヴァータ柑橘、酢、発酵食品、トマト
塩味水・火ピッタ・カパヴァータ塩、海藻、漬物
辛味火・風ヴァータ・ピッタカパ生姜、こしょう、唐辛子、大根
苦味風・空ヴァータピッタ・カパ葉物、ゴーヤ、ターメリック
渋味風・地ヴァータピッタ・カパ豆類、未熟な果物、緑茶

規則性が見えます。重く湿った味(甘・酸・塩)はカパを増やし、軽く乾いた味(辛・苦・渋)はカパを減らす。そして火の要素を持つ味(酸・塩・辛)はピッタを増やす。この2つを覚えておけば、細かい表を暗記しなくても方向が判断できます。

なぜ6味を揃えるのか

1食に6つの味が揃っていると満足感が得られやすい、というのが伝統的な考え方です。逆に言えば、足りない味があると、食後に何かを探してしまうということでもあります。

食事のあとに甘いものが欲しくなる、しょっぱいものをつまみたくなる、という感覚に心当たりがあるなら、その食事に足りていない味があった可能性がある。アーユルヴェーダはそういう読み方をします。

日本の定食は、この点でよくできた構成です。ごはん(甘味)、味噌汁(塩味)、漬物(塩味・酸味)、青菜のおひたし(苦味・渋味)、生姜や大根おろし(辛味)。意識しなくても、6味に近い形が揃います。

現代の食事で不足しやすい味

現代の食生活で偏りやすいのは、甘味・酸味・塩味です。加工食品や外食は、この3つを強く出す設計になっています。

一方で不足しやすいのが苦味と渋味です。この2つはピッタとカパを鎮める方向に働くため、不足すると重さや熱がこもりやすくなるとされます。

補い方は難しくありません。

  • 苦味:青菜、ゴーヤ、菜の花、ターメリックを料理に少量
  • 渋味:豆類、緑茶、りんごや柿のような渋みのある果物

味の偏りが招くとされること

古典では、特定の味を摂りすぎたときに起きやすい傾向も整理されています。

  • 甘味の摂りすぎ:重さ、停滞、カパの増加
  • 酸味の摂りすぎ:ほてり、胸やけ、ピッタの増加
  • 塩味の摂りすぎ:むくみ、渇き
  • 辛味の摂りすぎ:乾燥、消耗、ヴァータの増加
  • 苦味の摂りすぎ:冷え、乾き、力が出ない
  • 渋味の摂りすぎ:便が固くなる、乾燥

どの味も、適量なら整え、過剰なら乱す。良い味と悪い味があるのではなく、量と組み合わせの問題だというのが一貫した立場です。

体質別の使い分け

体質増やすとよいとされる味控えめにするとされる味
ヴァータ甘味・酸味・塩味苦味・渋味・強い辛味
ピッタ甘味・苦味・渋味辛味・酸味・塩味
カパ辛味・苦味・渋味甘味・酸味・塩味

季節でも調整が入ります。夏はピッタが増えやすいので苦味と渋味を、春はカパが増えやすいので辛味を、というように。詳しくは季節の養生リトゥチャリヤにまとめています。

実践するときの順番

  1. 今日の食事に足りない味を1つ探す:完璧を目指さない
  2. 薬味と副菜で足す:生姜、青菜、豆、緑茶で3つの味が補える
  3. 甘味の摂りすぎだけ意識する:現代でもっとも過剰になりやすい味

食事全体の組み立てはドーシャ別の食事法に、消化力との関係はアグニとアーマにまとめています。

本記事はアーユルヴェーダという伝統医学の考え方を知識として紹介するものであり、病気の診断・治療・予防を目的としたものではありません。食事制限のある方、治療中の方は、必ず医師などの専門家にご相談ください。