ヨーガ・スートラ
Yoga Sūtra / योगसूत्र
Definition
パタンジャリの名で伝わるヨガの根本経典。ヨーガを心の働きを止めることと定義し、八支則を示した全4章の箴言集。
この項目のポイント
- ヨーガ学派の根本経典で、全4章のごく短い箴言から成る
- ヨーガの定義は心の働きを止めることであり、ポーズの解説書ではない
- 八支則が示されるのは第2章で、アーサナに割かれているのは数節のみ
- アーユルヴェーダの古典ではないが、世界観と用語を共有している
ヨーガ・スートラとは
インドの六派哲学のひとつ、ヨーガ学派の根本経典です。パタンジャリの名で伝えられ、全4章、およそ195節(版によって196節)の短い箴言(スートラ)から成ります。成立年代には諸説があり、紀元前後から紀元後4世紀から5世紀ごろまで幅を持って語られます。
第1章の冒頭近くで、ヨーガとは心の働きを止めることである、と定義されます。姿勢や呼吸の技法書ではなく、心を扱う書物として書かれている点が、現代の一般的なヨガのイメージとの大きな違いです。
4章の構成
- 第1章 サマーディ・パーダ:三昧とは何か。心の働きと、それを静める方向づけ
- 第2章 サーダナ・パーダ:実践の章。八支則が示されるのはここ
- 第3章 ヴィブーティ・パーダ:集中が深まった先で生じるとされる特別な力について
- 第4章 カイヴァリヤ・パーダ:独存と訳される、最終的な境地について
アーサナに割かれているのは第2章の終盤の数節だけです。八支則の中では、感覚を内に向けるプラティヤーハーラから集中、瞑想へと進む後半に、より多くの記述が割かれています。
注釈とともに読まれてきた
箴言はきわめて短く、それ単独では意味が取りにくい形をしています。そのため伝統的には、ヴィヤーサに帰される『ヨーガ・バーシュヤ』をはじめとする注釈とあわせて読まれてきました。日本語で読む場合も、訳文だけでなく解説の付いた版が選ばれることが一般的です。
アーユルヴェーダとの関係
この文献はアーユルヴェーダの古典ではありません。チャラカ・サンヒターなどとは別の系譜に属します。ただしヴェーダを背景とする世界観を共有しており、トリグナやプラーナといった用語は両方の文献に出てきます。呼吸法や瞑想を養生の一部として扱うときに、この文献が参照されることがあるのはそのためです。
読み進め方とつまずきやすい点はヨーガ・スートラをどこから読むかにまとめています。
本項目は伝統的な思想を知識として紹介するものであり、医学的な診断・治療を目的とするものではありません。体調に不安のある方は専門家にご相談ください。
FAQよくある質問
ヨーガ・スートラを読めばポーズが分かりますか?
ポーズの解説書ではありません。アーサナについての記述は第2章の数節だけで、具体的な姿勢の名前は出てきません。安定していて快適であること、という条件が述べられるにとどまります。
誰が書いたものですか?
パタンジャリの名で伝えられていますが、一人の著者なのか、先行する教えをまとめた編纂者の名なのかについては定説がありません。成立年代にも諸説あります。
アーユルヴェーダの古典に含まれますか?
含まれません。チャラカ・サンヒターなどとは別の系譜の文献です。ただし背景となる世界観が近く、両方に共通して出てくる用語が多くあります。