リグ・ヴェーダ
Ṛgveda / ऋग्वेद
Definition
4つのヴェーダの中で最古とされ、神々への讃歌を集めた文献。アーユルヴェーダの起源をこのヴェーダに結びつける伝承もある。
この項目のポイント
- 4つのヴェーダのうち、最も古く成立したと考えられている文献
- 神々への讃歌が中心で、10の巻(マンダラ)から構成される
- 薬草やソーマを讃える讃歌も含まれ、起源をここに結びつける伝承もある
リグ・ヴェーダとは
リグ・ヴェーダ(Ṛgveda)は、ヴェーダと総称される古代インドの文献群の中で、最も古く成立したと考えられている一書です。現存するサンスクリット文献の中でも最古のものに数えられ、長く口伝によって伝承されてきました。
内容は神々への讃歌(スークタ)が中心で、アグニ(火)、インドラ、ヴァルナ、ソーマといった神格への讃歌が10のマンダラ(巻)にまとめられています。
他の3つのヴェーダとの違い
サーマ・ヴェーダは讃歌を歌うための旋律を、ヤジュル・ヴェーダは祭祀の式文と手順を扱います。この2つはリグ・ヴェーダの讃歌を祭祀の中でどう使うかという、いわば実践編にあたります。
これに対しアタルヴァ・ヴェーダは、病の治癒や薬草、長寿の願いといった暮らしに近い主題を多く含み、4つの中でも異質な位置づけとされています。
リグ・ヴェーダ自体は神々への讃歌が主題ですが、例外もあります。
- 第9巻の大半は、ソーマという植物(または、そこから作られた飲料)を讃える讃歌
- 第10巻には、薬草の効能を讃える讃歌(オーシャディ讃歌と呼ばれる一群)も含まれる
ソーマの正体は今も特定されておらず、複数の植物が候補として挙げられているものの、確定はしていません。
アーユルヴェーダとの関係
四つのヴェーダを比較した記事でも触れているとおり、アーユルヴェーダの起源は一つの伝承に定まっていません。最も広く伝えられているのはアタルヴァ・ヴェーダのウパヴェーダとする説ですが、リグ・ヴェーダに結びつける伝承も併存しています。
根拠とされるのは、先に挙げた薬草讃歌やソーマ讃歌の存在です。これらが医の知識の萌芽として語られることがありますが、ドーシャの理論やダートゥの体系がここに書かれているわけではありません。理論として整理されるのは、後の古典が編まれる時代を待つことになります。
なお、リグ・ヴェーダを含む祭祀の知識を正しく読み解くための学問はヴェーダーンガ、生活で使う実践知識はウパヴェーダと呼ばれ、アーユルヴェーダは後者に位置づけられます。
押さえておくと役立つ点
リグ・ヴェーダに医学書としての体系があるわけではなく、神々への讃歌の中に薬草や治癒への言及が点在している、という理解が実際に近いところです。アーユルヴェーダの起源を語るときにリグ・ヴェーダとアタルヴァ・ヴェーダの両方が登場するのは、こうした複数の伝承が併存しているためだと押さえておくと、情報の見分けがつきやすくなります。
本項目は伝統的な文献と分類の紹介であり、医学的な診断・治療を目的とするものではありません。体調に不安があるときは専門家にご相談ください。
FAQよくある質問
リグ・ヴェーダとは何ですか?
サーマ・ヴェーダ、ヤジュル・ヴェーダ、アタルヴァ・ヴェーダと並ぶ4つの[ヴェーダ](/term/veda/)のうち、最も古く成立したとされる文献です。神々への讃歌(スークタ)を集めたもので、10のマンダラ(巻)に分かれ、1000を超える讃歌を含むと伝えられています。
アーユルヴェーダとはどんな関係がありますか?
アーユルヴェーダは一般に[アタルヴァ・ヴェーダ](/term/atharva-veda/)のウパヴェーダとされますが、リグ・ヴェーダに起源を結びつける伝承も併存しています。薬草の効能を讃える讃歌が含まれていることが、その根拠のひとつとして語られます。
ソーマとは何ですか?
リグ・ヴェーダの第9巻の大半を占める讃歌の主題で、祭祀に用いられたとされる植物、またはそこから作られた飲料を指します。正体は特定されておらず、複数の植物が候補として挙げられていますが、確定した結論は出ていません。