アーユルヴェーダのガイド記事や用語には、ディナチャリヤやドーシャ別の食事法など、大人を前提にした養生が多く出てきます。

けれど古典が扱う範囲は、大人だけではありません。

子どもの養生と病気を専門に扱う分野が、アーユルヴェーダにも存在します。

この記事では、その分野がどのようなものか、大人向けの養生と何が違うのかを整理します。

アーユルヴェーダにも小児科がある

アーユルヴェーダが扱う領域は、八部門と呼ばれる8つの分野に分かれています。

そのうちのひとつ、カウマーラブリティヤが子どもを専門に扱う分野です。

現代の分類でいう小児科にあたります。

この分野の基礎資料とされるのがカシュヤパ・サンヒターです。

著者として伝わるのがカシュヤパで、内科の祖とされるアートレーヤ、外科の祖とされるスシュルタと並ぶ、小児科・婦人科の系譜の祖として位置づけられています。

カシュヤパ・サンヒターは他の古典に比べて伝存する部分が少なく、断片的にしか伝わっていません。

それでも、子どもの養生を専門に扱った文献として、この分野の基礎資料とされ続けています。

大人の養生は体質、子どもの養生は成長段階が基準

大人向けの養生でまず見るのは、生まれ持った体質、プラクリティです。

ヴァータピッタカパのどれが優位かによって、向く食事や生活のリズムが変わってきます。

子どもの養生でもドーシャの考え方そのものは使われますが、判断の軸がもうひとつ加わります。

まだ成長の途上にあるという前提です。

体質が定まりきっていない時期のケアなので、大人向けの養生をそのまま軽くしただけでは足りない、という考え方が背景にあります。

下の表は、同じ養生の項目を大人と子どもで比べたものです。

観点大人の養生(ディナチャリヤなど)子どもの養生(カウマーラブリティヤ)
判断の軸生まれ持った体質(プラクリティ)成長の段階、まだ体質が定まる途中であること
オイルケア全身のアビヤンガを日課にできるより軽く、穏やかな力加減で行うべきとされる
食事体質に合わせた6つの味の配分を調整する消化力の弱さを前提に、消化しやすいものから広げる
専門家の関与自分の体質を知ったうえで自己判断できる範囲が広い判断の余地が狭く、専門家への相談がより重要になる

この表からわかるのは、項目そのものは大人と共通していても、どこまでを自分の判断で行ってよいかが違うという点です。

子どものケアでは、力加減や量の調整の余地が小さく、専門家の判断がより重く位置づけられます。

妊娠期の養生から、子どもの養生へ

アーユルヴェーダには、妊娠期の過ごし方を扱うガルビニーパリチャリヤという考え方もあります。

月ごとに適した食事や過ごし方が定められており、ヴァータを乱さないことが中心に置かれます。

カシュヤパ・サンヒターは、この妊娠期の養生から出産後の母子のケアまでを扱ったと伝わる文献です。

つまり、妊娠期の養生と子どもの養生は、別々の分野ではなくひとつながりのものとして扱われてきたことになります。

母体の養生から始まり、出産、そして子ども自身の養生へ。

カウマーラブリティヤは、その流れの延長線上にある分野だといえます。

まとめ

  • アーユルヴェーダには子どもを専門に扱うカウマーラブリティヤという分野があり、カシュヤパ・サンヒターが基礎資料とされる
  • 大人の養生が体質を基準にするのに対し、子どもの養生は成長の途上にあることを前提に、より慎重な力加減で組み立てられる
  • 妊娠期の養生であるガルビニーパリチャリヤは、出産後の子どもの養生へとつながるものとして位置づけられる

大人向けの養生に慣れてくると、同じやり方を子どもにも当てはめたくなりますが、アーユルヴェーダの古典自体が、子どもは別の専門分野として扱うべきだと示しています。

本記事はアーユルヴェーダという伝統医学の考え方を知識として紹介するものであり、病気の診断・治療・予防を目的としたものではありません。子どもの健康や発達に関わる内容は、必ず小児科医など専門家にご相談ください。