アーユルヴェーダのハーブは、ドラヴィヤ(物質)として体系的に分類されてきました。単に効きそうなものを集めたのではなく、味(ラサ)・性質(グナ)・体に与える方向性という枠組みで整理されているのが特徴です。

この記事では、日本でも名前を見かけることの多い10種を、性質と伝統的な使われ方で整理します。

選び方の前提

ハーブを選ぶときの伝統的な視点は、次の2つです。

  1. どのドーシャを鎮めるか:温めるものはヴァータカパに、冷ますものはピッタに向くとされる
  2. 消化を助けるか、滋養を与えるかアグニを強めるものと、体を養うもの(ラサーヤナ)では役割が違う

滋養・若返りの文脈で使われるものをラサーヤナと呼びます。以下で紹介するうち、アシュワガンダ、アムラ、トリファラなどがこれに当たります。

一覧

ハーブ主な性質伝統的に鎮めるとされるドーシャ使われてきた文脈
アシュワガンダ温めるヴァータ・カパ滋養強壮、ストレスケア
アムラ冷ます3つすべて若返り、ピッタの調整
トリファラ穏やか3つすべて排出、めぐりの調整
ターメリック温めるカパ・ピッタ食事、肌と口腔のケア
トゥルシー温めるヴァータ・カパ呼吸のケア、聖なる植物
ニーム冷ますピッタ・カパ肌と口腔のケア、虫よけ
ヤシュティマドゥ冷ますヴァータ・ピッタのど、消化のケア
ビビータキー温めるカパトリファラの構成要素
トリカトゥ強く温めるカパ・ヴァータ消化を助ける配合
ギー冷ますヴァータ・ピッタ他のハーブを運ぶ媒体

個別に見る

アシュワガンダ

アーユルヴェーダを代表するラサーヤナの一つです。名前は馬の匂いを意味し、力強さの象徴として語られてきました。日本では滋養強壮やストレスケアの文脈で紹介されることが多く、温める性質からヴァータの乱れに向くとされます。

アムラ(アマラキ)

インドスグリとも呼ばれる果実で、酸味が強いのに冷ます性質を持つ、珍しい位置づけのハーブです。3つのドーシャすべてに使えるとされ、特にピッタの調整で名前が挙がります。

トリファラ

アムラ・ハリタキ・ビビータキーの三果を合わせた配合です。単体のハーブより配合として有名で、めぐりと排出を整える目的で長く用いられてきました。3つのドーシャすべてに使えるとされる点が、この配合が広く普及した理由と説明されます。

ターメリック(ウコン)

日本の食卓にもカレーの香辛料として入ってきています。アーユルヴェーダでは食事、肌のケア、うがいなど、幅広い文脈で使われてきました。ギーや牛乳と合わせる使い方が伝統的です。

トゥルシー(ホーリーバジル)

インドでは家庭の庭に植えられ、聖なる植物として扱われてきました。ハーブティーとして飲まれることが多く、呼吸のケアや、心を落ち着ける文脈で紹介されます。

ニーム

苦味の代表格です。冷ます性質が強く、肌や口腔のケアに用いられてきました。歯ブラシ代わりに枝を使う習慣も知られています。苦味はピッタとカパを鎮める方向に働くとされます。

ヤシュティマドゥ(甘草)

名前は甘い茎を意味します。のどや消化のケアの文脈で登場し、甘味と冷ます性質からヴァータとピッタに向くとされます。過剰摂取に注意すべきハーブとしても知られています。

ビビータキーとトリカトゥ

ビビータキーはトリファラを構成する三果の一つで、単体ではカパの調整の文脈で使われます。トリカトゥは生姜・長こしょう・黒こしょうの配合で、消化の火を強める目的で古くから用いられてきました。

ギー

厳密にはハーブではなく、バターから水分と乳固形分を除いた純粋な乳脂肪です。ただアーユルヴェーダでは、他のハーブの性質を体の奥まで運ぶ媒体として位置づけられており、ハーブの話には必ず登場します。

使うときの考え方

  • 食材から始める:ターメリック、生姜、こしょうのように、料理に入れられるものから取り入れるのが無理のない順序です
  • 単体より配合:トリファラやトリカトゥのように、伝統的には複数を組み合わせて使われてきました
  • 量と期間:多く摂れば良いという考え方はしません。伝統的には少量を継続する形です
  • 体質に合わせる:温めるものと冷ますものを、そのときの状態に合わせて選びます

自分の傾向を確認したい場合はドーシャ診断から、食事全体の組み立てはドーシャ別の食事法を参照してください。

本記事はアーユルヴェーダという伝統医学の考え方を知識として紹介するものであり、特定の商品の効果効能を示すものでも、病気の診断・治療・予防を目的としたものでもありません。持病のある方、服薬中の方、妊娠中の方は、必ず医師などの専門家にご相談ください。