アーユルヴェーダというと食事やオイルの話が中心に思えますが、外科の伝統も同じ体系の中にありました。それを伝えるのがスシュルタ・サンヒターです。

位置づけ

三大古典の一つで、著者とされるスシュルタは、医の神ダンヴァンタリから教えを受けたと伝承されています。チャラカ・サンヒターが内科と思想を扱うのに対し、こちらは処置の具体性が際立ちます。

何が書かれているか

手術器具の分類

器具が体系的に分類され、それぞれの形状と用途が記されています。刃物類と、鉗子やゾンデにあたる補助器具に大別されます。

処置の手順

切開、摘出、穿刺、縫合、焼灼といった処置が項目ごとに整理されています。傷の種類による縫合の使い分けや、包帯の巻き方の分類まで含まれます。

鼻の再建術

もっとも知られているのが、頬や額の皮膚を用いて鼻を再建する術式の記述です。形成外科の源流としてしばしば言及されます。

マルマ(急所)

体表の急所が107か所に分類され、それぞれ損傷したときの影響が記されています。外科的な処置において、傷つけてはならない箇所を知る必要があったためと説明されます。

現代のアーユルヴェーダでは、マルマは施術で触れる部位としての文脈で語られることが多いですが、もとは外科の知識でした。

外科以外の内容

外科書とされますが、それだけではありません。

健康な人の条件として引用される有名な一節は、この文献に含まれます。ドーシャ・アグニダートゥマラが整い、そのうえで心と感覚と魂が安らいでいること、というものです。

読むときの視点

この文献が示すのは、アーユルヴェーダが内科と外科の両方を含む医学だったという事実です。日本で紹介される範囲は全体の一部にすぎない、という前提を持っておくと、体系の大きさが正しく見えます。

八部門の全体像は八部門の項目に、三大古典の比較は三大古典の読みどころにまとめています。

本記事はアーユルヴェーダという伝統医学の考え方を知識として紹介するものであり、病気の診断・治療・予防を目的としたものではありません。